デジタル技術で障害者にアートを届ける|リットVRギャラリー

 芥川賞作家が訴えた現実 ~読みたい本が読めない~

 2023年7月19日、第169回芥川賞の受賞作に重度障害者の市川沙央さんが自らと同じ障害を持つ主人公の描いた作品「ハンチバック」が選ばれました。市川さんは、芥川賞の受賞記者会見で「一番訴えたいことは読書バリアフリーが進むこと」「読みたい本を読めないのは、権利の侵害だと思うので」と率直な思いを訴えました。

芥川賞 受賞作品 ハンチバック
芥川賞 受賞作品 ハンチバック

芥川賞作家・市川沙央さんが訴える「読書バリアフリー」|産経新聞

読みたい本を読む権利」市川さんの言葉は本当に重いと思います。

一方、読書と同じようにアートの世界においても、人が生きていく上で侵害されてはいけない「美術を鑑賞する権利」は存在すると考えます。では、美術館がどのようにして鑑賞のバリアフリーに応えるのか?美術館を訪れることが難しい障害者にどのように美術を届けるのか?大きな課題です。

様々な分野でアクセシビリティが求められる中、2022年5月、国は障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法を公布・施行(令和4年5月25日)しました。
この法律は、全ての障害者にとって、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動における情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が極めて重要であると国が定め、これにより、国や自治体の美術館等は、来館できない障害者への配慮が求められるようになりました。

障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策の推進|内閣府

オープンした鳥取県立バリアフリー美術館

障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の施行後、鳥取県が全国に先駆け、障がいのあるアーティストの作品に特化したオンライン美術館「鳥取県立バリアフリー美術館」が2023年2月28日にグランドオープンしました。

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鳥取県立バリアフリー美術館とは?

鳥取県立バリアフリー美術館とは、障害のあるアーティストが制作した自由で純粋なアート作品を多くの人に鑑賞してもらうことや、美術館や展示会に行くことが難しい人々にも芸術に触れる機会を提供することを目的に鳥取県と凸版印刷株式会社が共同開発したオンライン上のデジタル美術館です。鳥取県のプレスリリースによると公立のオンライン美術館で障がい者アートに特化したオンライン美術館は全国初の試みとなるとのことです。

鳥取県立バリアフリー美術館に関する報道の多くは、障害のあるアーティストが制作した作品いわゆるパラアートのデジタル展示についてフォーカスしていましたが、当ブログでは鑑賞のバリアフリーの取り組みに注目しました。

美術館のオンライン化やバーチャルリアリティー化などの最新デジタル技術が注目を浴びることが多い中、鳥取県は事業目的の一つに鑑賞のバリアフリーを掲げ、その趣旨でも「デジタル技術で、何時でも、何処でも、誰でも、インターネットに接続できる環境さえあれば、障がいのあるアーティストの優れた作品を鑑賞することができます」と、誰でも美術に触れる権利である美術のバリアフリーに言及しています。

このことからも鳥取県立バリアフリー美術館は、パラアートの普及推進だけでなく、先の市川沙央さんの記者会見での訴えにデジタル技術で応える先進的な美術館のバリアフリー事例だと当ブログは考えています。

鑑賞バリアフリーのためデジタル作品の活用を

先のブログで博物館法の改正に伴い、美術館の役割にデジタルアーカイブの取組が進んでいくと触れましたが、鳥取県バリアフリー美術館の事業は、更に一歩進んで、デジタルアーカイブした美術品データをどのように社会に還元させるか?という活用方法について言及をしていると言えます。

今後、多くの美術館・博物館において作品のデジタルアーカイブ化は進んでいくと思いますが、鳥取県バリアフリー美術館のように、バーチャルリアリティー技術やオンライン展示といった最新のデジタル技術やパブリッククラウドサービスを活用して、鑑賞のバリアフリー美術のバリアフリーが進んでいくいくことを期待しています。

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