新しい教育指導要領と博物館・美術館|リットVRギャラリー

新しい教育指導要領とは?

 2022年度から新しい学習指導要領が全ての教育課程(幼稚園、小学校、中学校、高等学校)で実施されたことはご存知でしょうか?学習指導要領は2017年以降、順次改訂され、現在の先生方の指導は、新たな時代や社会の変化に対応した新しい基準になっています。

新しい学校指導要領

その中で当ブログが注目したのは「美術館や博物館との連携や積極的な活用」といった記載が数多く盛り込まれている点です。
小学校学習指導要領(平成29年告示|P23)や中学校学習指導要領(平成29年告示|P24)には、このように記載されています。

  • ”地域の図書館や博物館,美術館,劇場,音楽堂等の施設の活用を積極的に図り,資料を活用した情報の収集や鑑賞等の学習活動を充実すること”

また、小学校の図画工作や中学校の美術の具体的な指導計画にも下記の指針が記載されています。

  • ”地域の美術館などを利用したり,連携を図ったりすること”

以前の教育指導要領にあった”積極的に活用するよう配慮すること”との表現と比較すると、今回の指導要領では、学校での学習に地域の博物館や美術館の活用や連携するよう、表現が強くなっています。

以前のブログで2023年4月から博物館法が改正され、博物館や美術館の役割に「地域の多様な主体との連携・協力」が追加されたとの記事を書きましたが、新たな教育指導要領の実施により、学校が博物館・美術館等の施設活用を行うことや相互の連携を積極的に行うことが不可欠になったと考えます。

教育現場と博物館・美術館との連携と課題

 新しい学校指導要領では、地域の施設の活用や連携について言及されていますが、地域の博物館・美術館の活用は従来から行われています。実際に多くの方が小中学校で博物館見学や美術館見学に行ったことを記憶しているのではないかと思います。

独立行政法人国立科学博物館が2009年に発表した小・中学校と博物館の連携に関するアンケート調査では、小学校の博物館の学習利用は80%を超える結果でした。一方で中学校の博物館の学習利用は30%未満にとどまり小学校との差が大きくなっています。恐らく中学校では近年、学校行事や考課試験の増加、部活動の指導等により新たな学外活動の時間がとりづらいことに起因した差だと推測します。

多忙な教職員、学芸員

他方、博物館・美術館側の立場に目を向けると、先のブログでも言及した学芸員や職員のリソース不足で、新たな見学の受入れ対応が難しい、新たな教育教材の準備時間が取れないなどの厳しい現状があります。さらに、子供たちの見学や課外活動を充実させるため館としては、事前に教職員と打ち合わせを行いたいが、教員が多忙で事前打ち合わせ時間が取れないことも課題となっています。
教育関係者に鑑賞教育のための研修を実施している博物館・美術館もありますが、多くの場合、参加される教員の熱意(教員の自主的な研鑽)によって支えられている実情も否めません。

GIGAスクール構想で整備されたICTインフラの活用も

 博物館・美術館での人的リソース不足、新聞報道等で長時間労働が問題視されている教員の多忙さなど、博物館・美術館と教育現場の連携には多くの課題があります。一方でそれらの課題をICTで解決できないか、博物館や教職員による新たな取り組みをはじめた地域もあります。

都城市の小学校と東京 国立科学博物館を結んだオンライン授業|NHK 宮崎県のニュース

離れた作品をVRで鑑賞/高校美術教員研究会|青森ニュース|Web東奥

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 近年、教育現場では文部科学省が進めたGIGAスクール構想によって、全国の児童・生徒1人1台のコンピューターとインターネット環境などのICTインフラが整備されています。それらのICTを活用して学校と博物館や美術館の連携を容易にすることが可能になっています。

GIGAスクール構想

GIGAスクール構想によって整備されたICTインフラを活用すれば、学校においてVRゴーグルなど特殊なハードウェアがなくても既に学校にあるパソコンやタブレットを使って、地域にある博物館や美術館が準備したオンライン博物館・美術館のVRコンテンツで鑑賞教育の授業が可能になります。

これは、児童・生徒が地域の博物館・美術館を訪れる前の予習としてVR鑑賞授業を行うことによって教育効果を高めることができそうです。また、教職員向けの研修教材としてVRコンテンツやYouTubeで学芸員による解説動画を準備すれば、忙しい教員へ効率的な鑑賞教育の研修機会となりそうです。

新しい教育指導要領への対応や博物館法への対応など数多くの課題がありますが、GIGAスクール構想で整備された設備やインターネットコンテンツなどICTをうまく活用して、地域の博物館・美術館や各々の学校に合った課題解決ができることを切に願っております。

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